2008年6月5日木曜日

5月31日第7回写真ワークショップ報告

5月31日(土)に写真ワークショップが行われました。
今回はInternational Center of Photographyという写真専門の美術館に皆さんと足を運びました。今行われているのはHeavy Light: Recent Photography and Video from Japanという現代日本人写真家13人のグループ展です。「日本」が写真ワークショップ5月のテーマということで、この展覧会で日本の写真の今を垣間見ようというのが狙いです。今回はNYでご活躍中のプロの写真家、棚井文雄さんに御参加頂きました。

写真ワークショップで美術館ツアーをしたのは今回が初めてだったのですが、以下の点を最初に説明させて頂きました。
1. 私の説明はあくまでも展覧会キュレーターの狙いとそれに少しの自分の意見を加えたものなのでそれが必ずしも見方の「正解」ではないということ。
2. ゆえに、皆さんの違う解釈や意見、質問や発言があれば何でも大歓迎!ということ。
以上のことを踏まえて、対話を交えて作品の理解を深めていくというツアーを目指しました。

ではそもそも日本の写真の今とは何か?ということなのですが、それはHeavy Lightというタイトルに要約されているように思います。Heavy(重い)、Light(軽い)という二つの相反する言葉の合わさっているこの言葉は同時に「重い光」という意味の成さない造語でもあります。このように曖昧かつとらえどころのない写真が日本現代写真の特徴ではないかということをキュレーター達は提案しています。例えば楢橋朝子さんのHalf Awake and Half Asleep in the Waterは泳げない彼女が海の中から水中と陸地を撮った作品です。水の中と陸地という二つの世界を見せつつもどちらに焦点が定まる訳でもなく不安定に揺れ動く彼女の視線は、見ている者に自然と戯れることの喜びと同時に恐怖の念を抱かせるような気がします。

13人の写真家の中でも特に皆さんが長い間足を止めていたのが、吉永マサユキさんの「ゴスロリ」と「族」でした。二つともこの展覧会ではテレビスクリーンに何十枚もの画像を映していく手法をとった作品です。その名の通りゴスロリ調の洋服に身を包む若者と暴走族の若者を捉えたこの作品は吉永さんならでは創り得たものかもしれません。暴力団の父親を持ち、そのことからいじめを受けた吉永さんはご自身も服役を経験したりテキ屋等の仕事を転々とした異色の写真家です。それゆえに日本社会の「はみ出し者」、「ならず者」を捉えるその目は驚くほど対等で、被写体からの絶大な信頼がそこに垣間見れます。

皆さんとバラエティに富んだ現代日本の写真を楽しんだ後はタイ料理レストランでお食事をご一緒しました。そこでも棚井さんに写真家から観たHeavy Light展についてなど実りの多いお話を伺うことができました。皆さんからは「解説が主観的な視点を交えたものだったから、自分も作品を見る時に自分なりの解釈をしていいんだと分かった」、「あれから他の友達と展覧会についての話でまた盛り上がった」といったお声を頂くことができました。

今回も参加者の皆様のお陰で充実したワークショップになりました。この場を借りて厚く御礼を申し上げます。次回は6月14日(土)を予定しています。また追って詳しいお知らせをさせて頂きますので、今回御参加いただけなかった方も次回是非お会いしましょう!

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